Story 12

 

森の中の湖。

湖面に浮く謎の球体を渡っていく3人。

ふと水面に波紋が現れ始めた。

キャンサー「…雨、降りだしそうだよ…。」

空は鈍い色の雲で覆われている。

フェニックス「翼が濡れるとまずいな…。」

水が苦手なフェニックスにとっては一大事だ。

 

キャンサー「…ぽつぽつ振り出したね…、フェニックスくん、私をおぶって傘代わりにしてもいいよ。」

フェニックス「いや、大丈夫だ。…それお前がラクしたいだけだろ。」

キャンサー「…ぐ、えへへ…」

お見通しだった。

 

ルーパス「ん、…あれなんだろ?」

何かを見つけたようだ。

緑の中に古びた塔のようなものが頭をのぞかせている。

キャンサー「…あそこで雨宿りできるかも!」

さっそく3人は森の小道を抜け生い茂る木々の中へ。

ルーパス「古そうな塔だね。」

目の前に現れた石造りの塔。

フェニックス「助かった。中に入れそうだ。」

その入り口は扉がなく開け放たれている。

しかし、窓がないのか塔の中は暗く、内側の様子はうかがえない。

ルーパス「いっちばんのりー!」

暗闇に吸い込まれるように入っていくルーパス。

ルーパス「ぎゃああああ!!!!!!!!」

キャンサー「え、え、どうしたの!?」

ルーパスの絶叫に思わず入り口で足を止めるキャンサー。

フェニックス「おい! ルーパス!」

キャンサー「る、ルーパスくん…?」

返事がない。

 

キャンサー「どうしたのかな…?」

フェニックス「あいつの身に何かあったか…。二人同時に入るぞ。周囲に気を付けろ!」

フェニックスは火の玉を作り出した。

炎の明かりを頼りに二人は恐る恐る塔の中へ。

 

???「やほー、彼のおともだちかな?」

突然頭上から聞こえてきた声に驚きつつ見上げた瞬間、

ジュッ

フェニックス「何!? 火が消えただと!」

声の主は確認できなかった。

あたりは闇に包まれる。

 

???「やれやれ、おきゃくさまをお呼びした記憶はないけれど…、あかりをつけてあげるのが礼儀かな?」

そんな声がしたかと思うと、周りがぼんやりと明るくなり始めた。

ピンク色の不思議な光が辺りを包む。

どんな仕組みで光っているかもわからなければ、光源もわからない。

キャンサー「ルーパスくん!」

ルーパスは部屋の中央でぐったりと倒れていた。

二人は駆け寄ってゆすったりほっぺをつねったりしてみたが反応がない。

キャンサー「どうしよう…ルーパスくん、目を覚まさないよ…。」

フェニックス「この声の主の仕業か…。野郎…!」

 

???「呼んだかい?」

振り向くとそこにはこの塔の主の姿が。

ロボットだ。

全身が金属の可動部と白くなめらかで光沢のあるフレームで構成されている。

眼と同じ色のピンクに怪しく光るラインが体中に走っており、足は地につかず中に浮いている。

後頭部には半透明で楕円体のチャンバー。

そこからポニーテールのようにチューブが生えている。

 

フェニックス「やっとお出ましか。俺のダチに何をした!」

???「ふふふ、なあに心配はいらないさ。」

決めポーズ。

???「彼の魂をちょっぴり『味見』させてもらっただけさ。」

フェニックス「魂…だと…?」

キャンサー「あ、あじ、あじみ…?」

???「まあまあ、減るものじゃあないんだ、あんしんしたまえ。」

そして二人を品定めするかのように眺める。

???「ほう、キミ、近年稀にみる『上物』じゃあないか…。」

くるっとターン。

そして決めポーズからの決めゼリフ。

???「キミの魂、ボクにちょっぴり『味見』させてよ…!」

フェニックス「…!! コイツ、ヤバい! 逃げるぞ!」

キャンサー「でもでも、ルーパスくんが…。」

???「ふふふ、そう、キミたちは逃げられないんだよ。」

今度は別の決めポーズ。

???「さあさ、こわくないよ…痛くしないから、こっちへおいで…。」

フェニックス「誰が行くか! …て、おいキャンサー!」

謎のロボットへダッシュで駆け寄るキャンサー。

キャンサー「ルーパスくんを…元に戻して!」

???「素直ないい子だね。とおりゃっ。」

ロボットの後頭部から生えたポニーテール、もといチューブがキャンサーめがけて迎え撃つ。

その先端は銀色のリングになっていて、4つのかぎづめが生えている。

フェニックス「なんだあれは…! マズい、避けろ!」

しかしチューブはキャンサーの甲羅に吸着。

キャンサー「えっ、えっ、なにこれ…!」

???「きみの魂いただくよ!」

フェニックス「キャンサー!!」

 

しばし沈黙。

キャンサー「…? あれ、なんともないよ…?」

甲羅からチューブがはずれる。

???「なに、バカな…。魂を吸い取れない…こんなこと今まで…。」

後ずさるロボット。

明らかに動揺している。

???「まさか、キミは…、そんな、ありえない…。」

キャンサー「…なんだかよくわからないけど、ルーパスくんの魂を返して!」

???「い、いやなこった!」

慌てて塔の上層へと飛んで行ってしまった。

フェニックス「野郎! 逃げやがった!」

キャンサー「…魂を吸い取る…そんなことができる人がいたなんて…。」

ロボットの消えていった先を見つめるキャンサー。

キャンサー「…なんとか、ルーパスくんの魂を取り返さないと…。」

フェニックス「仕方ない、雨宿りついでに付き合ってやるか。 …世話が焼ける。」

ルーパスの体を一瞥して、二人は謎のロボットを追いかけ塔を登りはじめた。

 

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