Story 21

 

ドラコ「誰かと思えば、あの時の蟹の嬢ちゃんにアンちゃん、それにチビガキじゃねェか。」

ルーパス「チビガキ言うなー!」

キャンサー「…どうして、どうしてこんなことするんですか…!?」

ドラコはため息をつく。

ドラコ「あいにく、俺様には暴れることしか能がないもんでなァ…。」

ギロリと光る眼光に身をよじるルーパス。

ドラコ「ぶっ壊されたくなけりゃァ、泣き喚きながら無様に逃げ去ることだなァ! ハハハッ!」

 

キャンサー「…そんなこと、ありません。」

震える声で言い放った。

ドラコ「あァ…?」

キャンサーに詰め寄るドラコ。

キャンサー「…暴れるしか能がないなんて、ドラコさんはそんな人じゃありません。」

ドラコをにらみ返すその目には、恐怖をこらえているのが見え透いている。

キャンサー「…ドラコさんは、あの時、私に危険を知らせてくれました。」

ドラコ「…演技だよ演技ィ。今まさにお嬢ちゃんは俺様を誤解しているだろォ?」

キャンサーは首を横に振る。

キャンサー「…いいえ…本当に暴れるしか能がないのならば…壊すことしかできないのならば…」

キャンサー「他人がどうなろうと、きっと気にも留めません。…だから、あなたは、本当は」

ドラコ「…ッ。黙れェッ!!」

腕を振りかぶるドラコ。

間一髪、ルーパスの飛び蹴りが入る。

 

ドラコ「キサマらァ…ぶっ壊されたいようだなァ…。」

壁にめり込んだドラコは瓦礫を払いながら立ち上がる。

ルーパス「昨日の決闘、場外に出たら負け、なんてルールはヒドいよ。僕には不利すぎる。」

壁と天井を見てにやりと微笑むルーパス。

ルーパス「でも、狭い所なら僕に分があるね。」

壁を蹴り、凄まじいスピードでドラコに近づき背後を取る。

ルーパス「とうっ!」

壁と脚力を利用し、再び飛び蹴りを繰り出す。

ドラコ「調子に乗るなよなァ…!」

ドラコの全身から火が噴き出る。

キャンサー「あわわわわー!」

キャンサーの吐いた泡がドラコを包む。

ドラコ「何ッ!? 火が消えただとッ!?」

丸腰のドラコの横っ腹に必殺キックがさく裂。

吹っ飛んだところをフェニックスの放った炎が追撃。

再び壁に激突し、のめりこんだ。

ルーパス「やった、完全勝利!」

フェニックス「ふん。三対一ならこんなものだろう。」

 

気絶したドラコを、たまたま近くに落ちていた手錠にかけ、鎖でがんじがらめに。

ルーパス「なんでこんなところに都合よくあるのか知らないけれど、助かった。」

それらは、星宮たちが暴徒鎮圧のために持ってきたものだとは知るよしもなく、

さらに、星宮たちが誘拐されたとは夢にも思っていない。

ドラコ「ぐっ…俺様は…負けたのか…。」

ルーパス「うわ! 起きた!」

ルーパスはきつく睨みつける。

ルーパス「さあ吐け! なんで暴れてたんだ!」

ドラコ「依頼されたんだよ。星宮のやつらを捕まえるエサとして暴れてくれって、なァ。」

ドラコ「好き勝手に暴れて金までもらえるなんて、ついに俺様の実力が認められたわけだ!」

ルーパス「!? 星宮を捕まえるって…それ大事件じゃない?」

キャンサー「…大事件だね。」

フェニックス「…。」

ドラコ「ま、俺様にとっちゃどうでもいいがな。ちと暴れ足りんが、テキトーにお縄にでもしてくれや。」

動けないドラコを覗き込むキャンサー。

キャンサー「…ドラコさんって…ツンデレですよね。」

ドラコ「ハァ!? てめえ突然何言って」

キャンサー「…友達になりたいのなら、そう言ってくれればいいのに。」

ドラコ「馬鹿か! そんなこと微塵にも思ってねェッての!」

キャンサー「…依頼を受けたのも、実は、自分のことを認めてもらえて嬉しかったから、とか?」

ドラコ「ん、な、お前ェ、それ以上言ってみろ…!」

キャンサー「…ふふふ。」

ドラコ「なんだそれ! 笑うな!」

 

ドラコ「そうだそれと。」

思い出したかのように言う。

ドラコ「確かヤツら、次の標的は王宮、だとか言ってたな。なにするのか知らんし興味もないが。」

ルーパスの表情が変わった。

ルーパス「…。それ、ホント?」

ドラコ「あァ。もう仕事は済んだ。ヤツらに関して隠し事する義理もねェよ。」

キャンサー「…そんな大事なことをわざわざ…。…やっぱりツンデレ」

ドラコ「お前なァ…。」

フェニックス「…ところで、ルーパスはどこ行った?」

いつのまにやら、ルーパスの姿が見えない。

 

今更こんなことしたって、何にもならない。

そう分かっていても、走らずにはいられなかった。

ルーパス「…待ってて。今度こそ、君を守る牙になるから。」

 

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