山道を進み、洞窟へと入ったキャンサー。 ここを抜けると森に出るのだ。 岩肌のごつごつした洞窟は薄暗くて、少し肌寒い。
キャンサー「…あれ、おかしいな…。」 何か違和感を感じる。 キャンサー「…ここ、さっきも通ったような…?」 ふと前方を見ると、一匹のカマカマが。 どこにでもいる昆虫型モンスターだが、その様子が何かおかしい。
彼らは暗闇に弱く、洞窟の中ではしょっちゅう壁に衝突してしまう。 壁にぶつかったカマカマは振り返ってまた歩き出すのだが、 おかしなことに、 振り返ったはずが、また同じ壁のほうを向いて進んでいるのだ。 そしてまた壁にぶつかり、振り返るがその先には壁…。 何が起きているのかよくわからないが、 まるで壊れたビデオテープのように同じ行動を繰り返し続けているのだ。
何度も、何度も…
いったい何だったんだろうと思いながらも、洞窟を進むキャンサー。 キャンサー「…ここ、さっきも通ったような…?」 ふと前方を見ると、一匹のカマカマが。 先ほどと同じように、様子がおかしい。
さらに洞窟を進む。 キャンサー「…ここ、さっきも通ったような…?」 ふと前方を見ると、一匹のカマカマが。 先ほどと同じように、様子がおかしい。
キャンサー「…あれ…?」 …何かがおかしい。強烈な違和感に襲われるキャンサー。
そのとき、何かが聞こえたような気がした。 ???「……スマセ………ノ…ホウヘ…」 次第にその「声」は、はっきりと聞こえてきた。 ???「…ミミヲ…スマセ………オトノ…スル……ホウヘ…」 キャンサー「…音?」 だれの声なのかはわからないけど、とりあえず周囲の音に耳を傾ける。 カマカマが壁にぶつかる音。水の滴る音。洞窟を抜ける風の音。そして… キャンサー「…?…向こうからカチコチって音がする…。…何だろう…?」 一定のリズムを刻むその音は、明らかに自然の音ではない。
その音がするほうへ向かうと、
カチッ コチッ カチッ コチッ…
一台の柱時計が、洞窟の少し広い部屋に鎮座していた。 不思議に思い、10メートルほどに近づくと、 時計?「…誰かいるな……いるようだな…。」 キャンサー「…しゃべった。」
次の瞬間、 キャンサー「…あれ…?」 気が付くと、時計との距離が20メートルほどに離れている。 キャンサー「…何が起こったの……?」 時計?「…おかしいな……『認識』している……してしまっている…。」 もう一度近づいてみるキャンサー。 時計?「…我が名はホロロギウム……『時計座』のホロロギウム…。」 キャンサー「ひゃっ!?」 突然の自己紹介にビビるキャンサー。 キャンサー「…わ、わたしは『蟹座』のキャンサーだよ。あなたも称号を持ってるんだね。…大会には出るの?」 ホロロギウム「キャンサー…?…ふうむ。」 少し間があって、 ホロロギウム「…大会には興味がない……ないかもしれない…。」 キャンサーは気になって、たずねてみた。 キャンサー「…えと、さっきから不思議なことばかり起きているけれど、全部あなたのしわざなの……?」 ホロロギウム「…そうだ……そうかもしれない。」 キャンサー「…それじゃあ、あなたをたおしていけばいいんだね?」 ホロロギウム「え」 キャンサー「かくごしろー!」 ホロロギウム「えええ」 |