Story 3

 

山道を進み、洞窟へと入ったキャンサー。

ここを抜けると森に出るのだ。

岩肌のごつごつした洞窟は薄暗くて、少し肌寒い。

 

キャンサー「…あれ、おかしいな…。」

何か違和感を感じる。

キャンサー「…ここ、さっきも通ったような…?」

ふと前方を見ると、一匹のカマカマが。

どこにでもいる昆虫型モンスターだが、その様子が何かおかしい。

 

彼らは暗闇に弱く、洞窟の中ではしょっちゅう壁に衝突してしまう。

壁にぶつかったカマカマは振り返ってまた歩き出すのだが、

おかしなことに、

振り返ったはずが、また同じ壁のほうを向いて進んでいるのだ。

そしてまた壁にぶつかり、振り返るがその先には壁…。

何が起きているのかよくわからないが、

まるで壊れたビデオテープのように同じ行動を繰り返し続けているのだ。

 

何度も、何度も…

 

いったい何だったんだろうと思いながらも、洞窟を進むキャンサー。

キャンサー「…ここ、さっきも通ったような…?」

ふと前方を見ると、一匹のカマカマが。

先ほどと同じように、様子がおかしい。

 

さらに洞窟を進む。

キャンサー「…ここ、さっきも通ったような…?」

ふと前方を見ると、一匹のカマカマが。

先ほどと同じように、様子がおかしい。

 

キャンサー「…あれ…?」

…何かがおかしい。強烈な違和感に襲われるキャンサー。

 

そのとき、何かが聞こえたような気がした。

???「……スマセ………ノ…ホウヘ…」

次第にその「声」は、はっきりと聞こえてきた。

???「…ミミヲ…スマセ………オトノ…スル……ホウヘ…」

キャンサー「…音?」

だれの声なのかはわからないけど、とりあえず周囲の音に耳を傾ける。

カマカマが壁にぶつかる音。水の滴る音。洞窟を抜ける風の音。そして…

キャンサー「…?…向こうからカチコチって音がする…。…何だろう…?」

一定のリズムを刻むその音は、明らかに自然の音ではない。

 

その音がするほうへ向かうと、

 

カチッ コチッ カチッ コチッ…

 

一台の柱時計が、洞窟の少し広い部屋に鎮座していた。

不思議に思い、10メートルほどに近づくと、

時計?「…誰かいるな……いるようだな…。」

キャンサー「…しゃべった。」

 

次の瞬間、

キャンサー「…あれ…?」

気が付くと、時計との距離が20メートルほどに離れている。

キャンサー「…何が起こったの……?」

時計?「…おかしいな……『認識』している……してしまっている…。」

もう一度近づいてみるキャンサー。

時計?「…我が名はホロロギウム……『時計座』のホロロギウム…。」

キャンサー「ひゃっ!?」

突然の自己紹介にビビるキャンサー。

キャンサー「…わ、わたしは『蟹座』のキャンサーだよ。あなたも称号を持ってるんだね。…大会には出るの?」

ホロロギウム「キャンサー…?…ふうむ。」

少し間があって、

ホロロギウム「…大会には興味がない……ないかもしれない…。」

キャンサーは気になって、たずねてみた。

キャンサー「…えと、さっきから不思議なことばかり起きているけれど、全部あなたのしわざなの……?」

ホロロギウム「…そうだ……そうかもしれない。」

キャンサー「…それじゃあ、あなたをたおしていけばいいんだね?」

ホロロギウム「え」

キャンサー「かくごしろー!」

ホロロギウム「えええ」

 

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