ルーパス「どけどけどけー!」 モンスターたちをなぎ倒しながら丘を駆けあがる。 と、前方に現れたのは黒いマント。 大会会場を混乱に陥れた謎のモンスター、マントムだ。 ルーパス「アイツは! てことは、やっぱり王宮に悪者が!」 怒りをあらわに飛びかかろうとするルーパス。 と、その時。 キャンサー「ルーパスくんダメ! それに触ったらねむらされちゃうよ!」 後ろからの呼びかけに我に返る。 振り向くと、飛んでこちらに向かってくるフェニックスと、彼におぶさるキャンサーの姿が。 ルーパスを追って超特急で空を飛んできたのだ。 ルーパス「二人とも…来てくれたんだね。」 フェニックス「来てくれたんだね、じゃねえ! 勝手に一人で飛び出すな、危なっかしい。」
三人はマントムたちの目を盗みながら丘のてっぺんを目指す。 そしてついに王宮の門までたどり着いたが…。 キャンサー「いっぱいいるね…。」 門には見張りのマントム。 その向こうにも無数のマントムがうろついている。 フェニックス「入れそうにないな。あきらめて帰るか。」 とりあえずルーパスの無事は確認したから王宮なんてどうでもいいやと言わんばかりに踵を返すフェニックス。 ルーパス「いいや、中へ入る方法ならあるよ。」 ついてきて、と二人を手招き。
フェニックス「…すまないが、なぜこんな危険なことに首を突っ込む?」 あまり乗り気でない。 キャンサー「…い、いいじゃない。ルーパスくんは、困ってる人をほうっておけないんだよね?」 フェニックス「得体のしれないヤツらがうじゃうじゃしていて、まだ状況がよく分かっていない。」 フェニックス「危険だ。何だお前、英雄願望か? 王様やお姫様を救いたいってか?」 ルーパス「…そうだよ。」 キャンサー「そうなの…!?」
二人はルーパスに連れられ丘の崖っぷちへ。 ルーパスはそこから身を乗り出し、 飛び降りた。 キャンサー「ルーパスくん!?」 キャンサーが崖を見下ろすと、 ルーパスは岩壁から生えた排水管から顔をのぞかせている。 ルーパス「王宮につながる秘密の抜け道さ。ここからならヤツらに見つからずに中へ入れるよ。」
三人は暗くて狭い管を進んでいく。 子供の彼らでもかがまないといけない狭さだ。 キャンサー「…ぁあ、くらくて、じめじめしてて、ひんやりしてて、落ち着く…。」 フェニックス「そろそろ教えてもらおうか。お前の隠し事を。」 キャンサー「…え、何か隠し事してるの!? ルーパスくん!」 ルーパスはちょっとため息をついて、 ルーパス「いやあ、別に隠し事ってほどでもないけれど、」 ルーパス「二人と出会う前は衛兵として王宮に住んでたんだ。」 重大なのかそうでないのかイマイチ判断しかねるカミングアウト。 フェニックス「そんなことだろうと思ったよ。」 キャンサー「…すごい! ルーパスくんにそんな過去が!」 ルーパス「まあ、元衛兵としてね? 王族のピンチには駆けつけなきゃ、っていうのと…」 キャンサー「のと…?」 ルーパス「お姫様は…その、初恋の相手だから…放っとけるわけないじゃない。」 キャンサー「あらー!」 キャンサーちゃん乙女。 蟹だけど。 フェニックス「で、どうして今は山に引きこもって修行なんて暑苦しいことをしてるんだ?」 ルーパス「そ、それは…。あ、ほら出口だよ。」 早足で光を目指す。 フェニックス「あ、待て、はぐらかしたな。」 |