ルーパスとキャンサーが先手を打とうと床を蹴る。 それをみてもモノケロスは余裕な素振り。 モノケロス「さてと、仕留めますか。」 モノケロスの角が赤く光りだした。 ルーパス「何だアレは!?」 光る角から発せられるジジジ…という音は次第に大きくなり、 モノケロス「食らえ! 『電光赤戈』!」 まさに電光石火のスピードで、赤い閃光の槍が四発、爆音とともに放たれる。 ルーパス「何ッ!?」 キャンサー「うぎゃー!」 二人には当たらず、床に命中。 金網が焼き切られ、キャンサーとルーパスの乗る足場が切り離されて宙に浮く。 キャンサー「きゃあー! 落ちる落ちる。」 なんとかほかの足場へと飛び移った二人。 下へと落ちて行った鉄の塊は見えなくなり、底に叩きつけられる音も聞こえない。
モノケロス「さて、 ボクらも鬼じゃないからさ、降参して大人しくしてくれるなら見逃してやってもいいけど。」 ルーパス「うるさい! お前たちは絶対止める!」 血気盛んなルーパスに少々あきれた様子のモノケロス。 モノケロス「ありゃりゃ。愛しのお姫様はもう助かったってのに、聞き分けの悪い小僧だ。」 ルーパス「お前たちが何を企んでいるのか知らないけれど、見過ごすわけにはいかないよ!」
モノケロスは苦笑し、再び角を発光させる。 モノケロス「次は直撃させるから、観念してね。」 ジジジ…という音が大きくなる中、キャンサーが、 キャンサー「…あの、質問があるのですが。」 モノケロス「んぉ、ボク? どうぞ。」 キャンサー「この金庫の中では能力は使えないはずです。なのに、なぜあなたは技を使えるのでしょうか…?」 モノケロス「よくぞ聞いてくれました!」 嬉しそう。 モノケロス「実はこれ、エレメンタルパワーを使わない技なんだよね。自分のバッテリーを使ってるから。」 モノケロス「能力というよりは、この体の『機能』ってカンジなんだよね。」 キャンサー「…それって、…ズルくない……?」
モノケロス「それはそうと、食らえ! 『電光赤戈』!」 爆音を立てて再び放たれた。 ルーパスに迫る三本の槍。 スピード自慢のルーパスでもその速度には対応できず、 直撃。
壁に打ち付けられたその体は、焼かれたようにボロボロ。 キャンサー「…ルーパスくん!」 怒りに震えるキャンサー。 モノケロス「次はキミだ。降参しないならキミにもぶち込んじゃうよ。」 再び発射体制に入るモノケロス。 考えるキャンサー。 どうやったらあのお馬さんに勝てるかな。
しゅばっ、と走り出したキャンサー。 逃げるでもなく、向かうでもなく、横から回り込むつもりだ。 モノケロス「はは無駄無駄。全方向が射程範囲内さ。」 そして、発射。 と、同時に殻にこもるキャンサー。 モノケロス「この電光赤戈は電撃さ。殻にこもってもしびれるぞ!」 爆音とともに直撃。 と、はじかれたキャンサーの体が壁に激突。 モノケロス「ん?」 キャンサーの衝突で破壊された、壁を伝うパイプ。 そこからほとばしる水。 モノケロス「えっ。」 水をかぶったモノケロスは、ぷしゅー、という音を立て、 モノケロス「ア、アガガガ、ギギギ、ギ。」 動かなくなってしまった。 足場に転げ落ちたキャンサーは黒焦げながら、 キャンサー「…ロボットとフェニックス君は、水が苦手、だよね。」 なんてつぶやいて、ばたりと気絶した。
ペガスス「やられたか、しかし。」 邪魔をするキャンサーとルーパスは二人とも動かない。 アンドロメダ「そんな…。」
モノケロスは姫もモノケロスも眼中にない様子で部屋を後にしようとする。 しかし、 ルーパスが立ち上がった。 アンドロメダ「ルーパス…!」 その様子を見たペガススだが、 ペガスス「満身創痍のその体で何ができる。」 翼を広げ、臨戦態勢。
と、次の瞬間には鼻先にルーパスの拳が。
がしゃん、と嫌な音を立てて壁に激突するペガスス。 ふらふらなルーパスの拳でも、精密機械の彼には十分なダメージだ。 ペガスス「き、キサマ…まだ、動けたのか…。」 ついに膝をつくルーパス。 ルーパス「はあ、はあ、今度こそ、まもるん、だ。」 ルーパス「…君を。」 姫の顔を見上げる。 ルーパスの顔が引きつる。 彼女の背後に 影が。
ルーパス「…姫!」 ルーパスが手をのばしたが、 その影は姫の背後を通り抜け、キャンサーのもとへ。 ルーパス「な、なに、待て!」 全身をマントで包んだそれは、転がっているキャンサーを足場から蹴り落とした。
闇に吸い込まれていく赤い甲羅。 ルーパス「お、前、なんてことを」 言い切らないうちに、謎のマントに後ろを取られ、 そこで気を失った。
謎のマントはルーパスに続いて、姫のうなじに手刀を打ち込み気絶させた。 下方の闇を除きながら、マントをまくって顔をのぞかせる。 そして一人つぶやいた。
フェニックス「…悪く思うなよ。」 |