早朝、出発の準備をする一行。 天に浮遊する大宮殿へは、今日中に到着する予定だ。 そんな彼らに迫る影。 キャメロパルダリス「やあやあ、フェニくん、調子はどうだい?」 ペガスス「……。」 キリンの少年と、やっつけたはずのペガススだ。 オーライガ「なんだコイツら。」 ルーパス「あの白いのは悪いやつだったから、隣のも悪いやつだと思う!」 キャメロパルダリス「はっはっは、ボクが悪者に見るかい?」 少なくとも胡散臭い。 キャンサー「…フェニックス君の知り合い?」 いや知らん、とフェニックス。 キャメロパルダリス「はは何を言っているんだフェニフェニ君、ボクたちお友達じゃあないか。」 キャンサー「…フェニックス君のお友達…!」 フェニックス「だからあんな奴知らん。」
キャメロパルダリス「それはひとまず置いといて、」 本題を切り出すキャメロ。 キャメロパルダリス「そこのカニ。キミがキャンサーだね?」 キャンサーを指さす。 キャンサー「…あ、うん、そう…だけど。」 キャメロパルダリス「我らがマスター、サーベラス様が君をお待ちだ。」 サーベラスという名前にアラがピクリと反応した。 キャンサー「…わ、私を…? …その方は、どこにいるの?」 ルーパス「いやいやキャンサーちゃん! 悪者に耳を貸しちゃだめだよ!」 ルーパスがキャンサーを守るように前に立つ。 キャメロパルダリス「全くこの子犬くんは、人を悪者呼ばわりなんて不躾な。」 ルーパス「こ、子犬じゃなーい! 狼だよ! お前、この、態度がでかいぞ!」 アラ「落ち着け落ち着け、どうどう。」 わざとらしく肩をすくめ、あきれた様子のキャメロ。 キャメロパルダリス「今度こそ本題に戻るよ。マスターは大宮殿で君をお待ちだ。」 にやりと笑ってウインク。 彼の言葉が意味するのはつまり。 キャンサー「…じゃあ、お兄ちゃんは…。」 キャメロパルダリス「察しがいいねえ。今頃、力を吸い取られて寝込んでいるだろう。」 もちろん、キャンサーの答えは一つだ。 キャンサー「…行くよ。その、ますたーさんのところに連れて行って!」 ルーパス「本気ぃ!? 絶対罠だよ!」 キャンサー「…だって、そうしないとお兄ちゃんが…。」 キャメロパルダリス「決まりだね。ペガス君、出番だよ。」 何も決まっていない気がするが、キャメロの指示でペガススが動き出した。
次の瞬間。 周囲の景色が青いレンガと柱でできた廊下へと変わった。 ルーパス「はっ! ワープした!?」 アラ「ここは…大宮殿の内部だね。お馬さんの能力で連れてこられたようだ。」 キャンサー「お兄ちゃん! どこー!?」 アラ「あーこらこら、不用意に走り回らない。」 オーライガ「…なぜ俺まで連れてこられたのだ。」 キャメロパルダリス「あ、ペガス君、関係ないやつらまでワープさせたね。全く…。」 大混乱。
先を急ごうとするキャンサーたちを尻目に、キャメロへと歩み寄るフェニックス。 フェニックス「…何のつもりだ。」 キャメロパルダリス「さっき言っただろ? あのカニ子ちゃんをマスターの元に連れて行くのさ。」 フェニックス「あいつの監視は俺に任されている。」 キャメロパルダリス「じゃあ役割交代だ。マスターはしびれを切らしている。」 フェニックス「あいつが一体何だっていうんだ?」 キャメロパルダリス「それを知ったとしてとして、キミは一体どうするんだい?」 フェニックス「…くっ。」 勝ち誇った笑みを浮かべるキャメロ。 キャメロパルダリス「あっはっは、情でも移っちゃったかな? もう使い物にならないなあ。」 フェニックス「…黙れ。」 キャメロパルダリス「ま、いいけど、賢く行動しないと、いずれマスターに捨てられちゃうよ。」 フェニックス「黙れ!」 キャメロは鼻歌を歌いながら奥へ進んでいったキャンサーたちの方へ行ってしまった。 フェニックス「…。」
アラ「つまりキミは一連の事件の犯人たちとグルだったってわけだ。」 実は居残っていたアラ。 フェニックスは何も言い返さない。 アラ「キミの好きにするといいよ。カニちゃんを選ぶのか、それとも裏切るのか。」 いつになく真面目トーン。 アラ「ただし、カニちゃんはキミがうそつきだと知ったら、」 翻って背を向ける。 アラ「…許すだろうね。あの子は優しいから。」 そう言って皆を追いかけて行った。
奥へと進むキャンサー。 実は大宮殿へ来てから例の幻聴がひどく、もはや何と言っているのかわからないほどだ。 このことを誰かに打ち明けていれば、後で起こる最悪の事態を避けることができたのだろうか。
そしてついに。 キャンサー「お兄ちゃん!!」 キャンサーは大宮殿の一室でスコーピオを見つけた。 兄の姿は、望ましくないことに、ボロボロにやられていた。 スコーピオ「キャンサー!? お前がなぜここに…!?」 息も絶え絶えでキャンサーの方へ這い寄ろうとする。 キャンサー「そんな…お兄ちゃんが…。」 こんなボロボロになった兄は記憶になく、激しく動揺する。 ルーパス「お前が、お前が悪の親玉だな!?」 ルーパスが叫んだ先に、マントの男が浮いている。 三匹の白蛇が生えたマントムのような姿のそれは、王宮で奪われた秘宝「エーテルストーン」を手にしている。 ???「そう…私が地獄より這い上がりし復讐者…サーベラスだ。」 そう言葉を発すると、キャンサーの方を向いた。 マントの暗闇に光る眼が笑い、再び声を発する。 サーベラス「ようやく会えたぞ。卑しき蟹の小娘よ…。」 |