Story 34

 

早朝、出発の準備をする一行。

天に浮遊する大宮殿へは、今日中に到着する予定だ。

そんな彼らに迫る影。

キャメロパルダリス「やあやあ、フェニくん、調子はどうだい?」

ペガスス「……。」

キリンの少年と、やっつけたはずのペガススだ。

オーライガ「なんだコイツら。」

ルーパス「あの白いのは悪いやつだったから、隣のも悪いやつだと思う!」

キャメロパルダリス「はっはっは、ボクが悪者に見るかい?」

少なくとも胡散臭い。

キャンサー「…フェニックス君の知り合い?」

いや知らん、とフェニックス。

キャメロパルダリス「はは何を言っているんだフェニフェニ君、ボクたちお友達じゃあないか。」

キャンサー「…フェニックス君のお友達…!」

フェニックス「だからあんな奴知らん。」

 

キャメロパルダリス「それはひとまず置いといて、」

本題を切り出すキャメロ。

キャメロパルダリス「そこのカニ。キミがキャンサーだね?」

キャンサーを指さす。

キャンサー「…あ、うん、そう…だけど。」

キャメロパルダリス「我らがマスター、サーベラス様が君をお待ちだ。」

サーベラスという名前にアラがピクリと反応した。

キャンサー「…わ、私を…? …その方は、どこにいるの?」

ルーパス「いやいやキャンサーちゃん! 悪者に耳を貸しちゃだめだよ!」

ルーパスがキャンサーを守るように前に立つ。

キャメロパルダリス「全くこの子犬くんは、人を悪者呼ばわりなんて不躾な。」

ルーパス「こ、子犬じゃなーい! 狼だよ! お前、この、態度がでかいぞ!」

アラ「落ち着け落ち着け、どうどう。」

わざとらしく肩をすくめ、あきれた様子のキャメロ。

キャメロパルダリス「今度こそ本題に戻るよ。マスターは大宮殿で君をお待ちだ。」

にやりと笑ってウインク。

彼の言葉が意味するのはつまり。

キャンサー「…じゃあ、お兄ちゃんは…。」

キャメロパルダリス「察しがいいねえ。今頃、力を吸い取られて寝込んでいるだろう。」

もちろん、キャンサーの答えは一つだ。

キャンサー「…行くよ。その、ますたーさんのところに連れて行って!」

ルーパス「本気ぃ!? 絶対罠だよ!」

キャンサー「…だって、そうしないとお兄ちゃんが…。」

キャメロパルダリス「決まりだね。ペガス君、出番だよ。」

何も決まっていない気がするが、キャメロの指示でペガススが動き出した。

 

次の瞬間。

周囲の景色が青いレンガと柱でできた廊下へと変わった。

ルーパス「はっ! ワープした!?」

アラ「ここは…大宮殿の内部だね。お馬さんの能力で連れてこられたようだ。」

キャンサー「お兄ちゃん! どこー!?」

アラ「あーこらこら、不用意に走り回らない。」

オーライガ「…なぜ俺まで連れてこられたのだ。」

キャメロパルダリス「あ、ペガス君、関係ないやつらまでワープさせたね。全く…。」

大混乱。

 

先を急ごうとするキャンサーたちを尻目に、キャメロへと歩み寄るフェニックス。

フェニックス「…何のつもりだ。」

キャメロパルダリス「さっき言っただろ? あのカニ子ちゃんをマスターの元に連れて行くのさ。」

フェニックス「あいつの監視は俺に任されている。」

キャメロパルダリス「じゃあ役割交代だ。マスターはしびれを切らしている。」

フェニックス「あいつが一体何だっていうんだ?」

キャメロパルダリス「それを知ったとしてとして、キミは一体どうするんだい?」

フェニックス「…くっ。」

勝ち誇った笑みを浮かべるキャメロ。

キャメロパルダリス「あっはっは、情でも移っちゃったかな? もう使い物にならないなあ。」

フェニックス「…黙れ。」

キャメロパルダリス「ま、いいけど、賢く行動しないと、いずれマスターに捨てられちゃうよ。」

フェニックス「黙れ!」

キャメロは鼻歌を歌いながら奥へ進んでいったキャンサーたちの方へ行ってしまった。

フェニックス「…。」

 

アラ「つまりキミは一連の事件の犯人たちとグルだったってわけだ。」

実は居残っていたアラ。

フェニックスは何も言い返さない。

アラ「キミの好きにするといいよ。カニちゃんを選ぶのか、それとも裏切るのか。」

いつになく真面目トーン。

アラ「ただし、カニちゃんはキミがうそつきだと知ったら、」

翻って背を向ける。

アラ「…許すだろうね。あの子は優しいから。」

そう言って皆を追いかけて行った。

 

奥へと進むキャンサー。

実は大宮殿へ来てから例の幻聴がひどく、もはや何と言っているのかわからないほどだ。

このことを誰かに打ち明けていれば、後で起こる最悪の事態を避けることができたのだろうか。

 

そしてついに。

キャンサー「お兄ちゃん!!」

キャンサーは大宮殿の一室でスコーピオを見つけた。

兄の姿は、望ましくないことに、ボロボロにやられていた。

スコーピオ「キャンサー!? お前がなぜここに…!?」

息も絶え絶えでキャンサーの方へ這い寄ろうとする。

キャンサー「そんな…お兄ちゃんが…。」

こんなボロボロになった兄は記憶になく、激しく動揺する。

ルーパス「お前が、お前が悪の親玉だな!?」

ルーパスが叫んだ先に、マントの男が浮いている。

三匹の白蛇が生えたマントムのような姿のそれは、王宮で奪われた秘宝「エーテルストーン」を手にしている。

???「そう…私が地獄より這い上がりし復讐者…サーベラスだ。」

そう言葉を発すると、キャンサーの方を向いた。

マントの暗闇に光る眼が笑い、再び声を発する。

サーベラス「ようやく会えたぞ。卑しき蟹の小娘よ…。」

 

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