Story 8

 

二人は滝口に到着。

崖は険しくいつ崩れるかわからない危険な岩場。

水が削って滑らかになった部分を通るしかない。

つまり水に流されるように滝を降りて行くことになる。

 

キャンサーはさっそく水に足を踏み入れるが、

キャンサー「きゃ、冷たい。」

森から流れてくる水は雪が融けたもので、冷たい。 が、

ルーパス「ひゃっほーい!これぞ天然のウォータースライダー!楽しーい!」

寒さに強いルーパスにとっては遊び感覚。

キャンサー「わわわ、まってよー!」

置いて行かれまいと続けて滑り降りる。

 

岩場を滑り降り、滝つぼにダイブ。

幾度も繰り返すうちにキャンサーも水の冷たさに慣れ、笑顔が見え始めたところで、

???「…ごきげんだな、二人とも。」

赤い髪に燃えるような翼、白いマフラーを巻いてポケットに手を突っ込んだ少年の姿が。

キャンサー「あ。フェニックスくん…こんにちは。」

 

ルーパス「やっほー!フェニックス君!待った?」

フェニックス「やっほー、じゃない、全く。」

少しご機嫌斜めな模様。

それもそのはず。

フェニックス「ルーパス、待ち合わせの時間は何時だ?」

ルーパス「…あー、えーっと、…テヘヘ」

フェニックス「テヘヘじゃねえ!こんな水しぶきの凄まじい所でどれだけ待たせるつもりだお前は!」

ルーパス「うわわー!ごめんなさいごめんなさい。キャンサーちゃんとのお話がはずんじゃって…。」

フェニックス「ふーん。」

キャンサーを見やるフェニックス。

キャンサー「…ごめん、突然押し掛けた私が悪いの…。あ、でも待ち合わせ場所は…その…。」

ルーパス「僕の家からすぐに行けるところがいいかなー、って。」

フェニックス「て、てめえ…。」

ルーパス「キャンサーちゃんも楽しんでくれたみたいだし! ね?」

キャンサー「…それはそうだけど…、…フェニックスくんはちっとも楽しくないと思う。」

フェニックス「……。」ギロリ

ルーパス「……あ、…以後気を付けます、ハイ。」

 

しばしルーパスの反省タイム。

そして3人はこの後の計画について話し合う。

キャンサー「…まずはおひるごはんにしよう! …あ、おにぎりもう食べちゃった。」

フェニックス「俺も食べてきたし、ルーパスもたぶん大丈夫だろう。少し休憩してから会場へ向かうか。」

ルーパス「たぶんって! …まあ、空腹に耐えるのも修行の一環か…うん。」

先ほどのこともあって文句の言えないルーパス。

キャンサー「…ところで会場はここからどれくらいかかるのかな?」

ルーパス「急げば日が落ちるころには着くかなー、ってカンジだね。」

キャンサー「…じゃあ、ゆっくりはしていられないね。」

フェニックス「まあ、まずは会場の方角を確認すべきだな。ここからでも俺の目で見えるだろう。」

そう言うとフェニックスは羽をはばたかせ上昇。

周囲は岩壁に囲まれているので、十数メートルはあろうかという崖のてっぺんへ向かう。

ルーパス「あーまって僕も登る!」

キャンサー「…あ、お、おいてかないで~。」

 

先を行くフェニックスは崖のくぼみに人影を見つけた。

その意外な顔に思わず声を漏らす。

フェニックス「…い、一体何故ここに…!?」

遅れて登ってきた二人もひょっこり顔を出す。

キャンサー「あ。……え?」

ルーパス「うわーあ、このタイミングで…、最悪だね。」

3人がそこで出会ったのは、

キャンサー「…お兄…ちゃん……。」

天蠍宮のスコーピオ、

あれほど家を出るなと妹に念を押していた、キャンサーの兄であった。

 

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