排水管を抜けると王宮の地下室に出た。 何やらほかにも大小たくさんの管があり、あちこちに梯子がある。 王宮と言えど、レンガで作られたこの地下室はじめっとしていて暗い。
フェニックス「ここにはマントムどもはいなさそうだな。」 キャンサー「…ぁあ、わたしもここに住みたいな…。」 ルーパスは迷いなく目的のはしごへと向かう。 ルーパス「これを登ればお姫様の部屋に直接つながってるんだ。」 そう言って梯子を上る。 キャンサー「…やだ、女の子の部屋に勝手に突然押し掛けるなんて……ドキドキしちゃうかも。」 キャンサーちゃん乙女。蟹だけど。
警戒度MAXで地上へつながるフタを開く。 一気に部屋へと上がる三人。 キャンサー「きゃー、今お姫様のもとに運命の王子様とその仲間が…って、あれ。」
きらびやかな装飾。 豪華な天蓋付きふかふか高級ベッド。 暖炉には繊細な装飾が施された薄い陶器の数々。 頭のよさそうな本が詰まった本棚。 これまたすごそうなカーペットが思いっきりめくれて下から平民の子供が三人現れたことに目を瞑れば、 まさに、ザ・お姫様の部屋。
そして、驚きの表情でこちらを見つめる美しい少女。 手入れに気を使っているであろう栗色の髪は滑らかなウェーブがかかり、 お召し物は紺色をベースに宇宙の星々を想起させるキラキラのまぶされたドレス。 首から下げている大ぶりな宝石のペンダントは間違いなく一点物だ。 彼女の名はアンドロメダ。 この星を象徴するケフェウス王とその妃カシオペアの娘。 つまりお姫様。プリンセス。
ここまではだいたい完璧。 ではなぜキャンサーの口から「あれ。」なんて言葉が出たのかというと、 ???「キサマら! まさか、そんなところから!? さては悪の手先だな!?」 もうすでに彼女を守る「王子様」が傍についていたのだ。
ルーパス「やあ、パーシアス。久しぶりだね。」 苦い笑顔で挨拶する。 パーシアス「む、おまえは…ハハッ、負け犬ルーパス君じゃないか。野垂れ死んでいないようで何よりだ。」 彼はペルセウス座の称号を持つ勇者パーシアス。 ルーパス「おかげさまで元気にやっているよ。」 パーシアス「まったく君は、出来損ないのくせに今更のこのこと何をしに来たっていうんだい?」 早速あまりよろしくない雰囲気。
キャンサー「ちょ、ちょっと、…どなたか知らないけれど、ルーパスくんは負け犬でも、出来損ないでも、」 ルーパス「いいんだよ、キャンサーちゃん。…いいんだ。」 友達をけなされムキになるキャンサー、をなだめるルーパス。 パーシアス「ふん、今オレは姫を守るのに忙しいんだ。帰れ。」 アンドロメダ「パーシアス。そのあたりにしておきなさい。他人をけなすなんてみっともありません。」 ここでアンドロメダ姫が口を開いた。 パーシアス「しかし姫、あなたはルーパスに甘すぎます。お忘れですか、ヤツから受けた仕打ちを。」 ルーパスは気まずそうに視線を落とす。 フェニックス「お前、一体何をやらかしたんだ。」 パーシアス「ふふん、教えてやろう。コイツはな」
ドカバキッ
鍵をかけていたはずの扉が破壊され、マントムがなだれ込んできた。 パーシアス「ちっ、ヤツらめ、まさか入ってくるとは。」 キャンサー「よし、ルーパスくん、あいつらを追い払って、お姫様のハートをゲットだよ!」 |